Case454 従業員による小集団活動の業務性や夜間・交代勤務制の過重性を認定して心停止の業務起因性を認めた事案・国・豊田労基署長(トヨタ自動車)事件・名古屋地判平19.11.30労判951.11
(事案の概要)
労災不支給決定に対する取消訴訟です。
本件労働者は、本件会社において、班長に相当するEX(エキスパート)として、自動車ボディーの品質検査業務に従事していました。本件労働者の勤務形態は、日勤と夜勤を1週間ごとに交代する2交代勤務制でした。
また、会社では、本来業務の他に、小集団活動として、創意くふう提案活動、QCサークル活動、EX会活動、交通安全活動があり、本件労働者は勤務時間中にこれらの活動にも参加していました。
本件労働者は、業務中に意識を失って、病院に搬送されるも心停止を起こし死亡しました。本件労働者の遺族である原告が労災申請しましたが不支給決定がなされました。
(判決の要旨)
1 小集団活動の業務性
判決は、小集団活動の業務性について、会社が人事考課において、創意くふう等の改善提案やQCサークルや小集団活動での活動状況、組メンバーを巻き込んだ活動ができることを考慮要素としていること、創意くふう提案およびQCサークル活動が、会社の自動車生産を支えてきたことは会社紹介のパンフレットでも積極的に評価されていること、これらの活動はいずれも一定の頻度で行われ、上司が審査し、その内容が業務に反映されることがあり、賞金や研修助成金、一部の時間の残業代が支払われること、EX会は全社的な規模で組織された団体であり、会員相互の親睦のほか、知識と技術の向上を図り、社運の興隆に寄与することなども目的としていることなどに照らすと、創意くふう提案及びQCサークル活動は、会社の事業活動に直接役立つ性質のものであり、また、交通安全活動もその運営上の利点があるものとして、いずれも会社が育成・支援するものと推認され、これにかかわる作業は、労災認定の業務起因性を判断する際には、使用者の支配下における業務であると判断するのが相当であるとしました。
EX会の活動についても、会社の事業活動に資する面があり、役員の紹介などといった一定の限度でその活動を支援し、その組織が会社組織と複合する関係にあることなどを考慮すると、役員としてその実施・運営に必要な準備を会社内で行う行為については業務であると判断するのが相当であるとしました。
以上より、在社時間に小集団活動に費やした時間が含まれるとしても、全て労働時間に当たることを前提に、本件労働者が月100時間を超える時間外労働をしていたと認定しました。
2 夜間・交代勤務制
また、夜間・交代勤務制による労働は、人間の約24時間の生理的な昼夜リズムに逆行する労働態様であることから、慢性疲労を起こしやすく、様々な健康障害の発症に関連することが知られており、特に、近年の研究により、心血管疾患の高い危険因子であるとして、深夜勤務を含む2交代勤務制という勤務形態は慢性疲労につながるものとして、業務の過重性の要因として考慮するのが相当であるとしました。
3 結論
以上より、本件労働者の業務は量的にも質的にも過重なものであったとして業務起因性を認め、労災不支給決定を取り消しました。
※確定