Case460 飲酒運転が懲戒解雇事由とされていないこととの均衡から無免許運転を理由とする懲戒解雇を無効とした事案・トヨタモビリティ事件・東京地判令4.9.2労経速2513.19
(事案の概要)
原告労働者は、運転免許の停止処分を受けている期間中に、勤務店舗から約1.3km離れた商業施設まで被告会社の社用車を運転したことが、就業規則上の「著しい交通法違反により、刑法に触れるとき」に該当するとして諭旨退職処分を受け、退職届を提出しなかったことから懲戒解雇となりました。
なお、会社の就業規則では、「飲酒運転をしたとき」は訓戒、けん責、減給、出勤停止、解任又は降格、「飲酒運転をして事故を発生させたとき」は諭旨退職又は懲戒解雇の対象とされていました。
本件は、原告が会社に対して懲戒解雇の無効を主張し雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、原告の本件運転行為は懲戒事由に該当するものの、事故を発生させておらず、事故の発生を伴わない飲酒運転が懲戒解雇事由とされていないこと等に照らせば、懲戒解雇を行うことの相当性は慎重に検討せざるを得ないとしました。
そして、本件運転行為が約1.3kmを1回走行したにとどまること、本件運転行為により会社に明らかな損害が発生したとは認められないこと、原告が入社以降懲戒処分を受けたことがないこと等の事情も勘案すれば、本件運転行為について懲戒解雇を行うことは懲戒処分の量定の均衡を欠くものであるとして、解雇を無効としました。