Case562 家政婦兼訪問介護ヘルパーにつき家事使用人に該当しないとして労災認定した事案・国・渋谷労基署長(山本サービス)事件・東京高判令6.9.19労判1319.61

(事案の概要)

 労災不支給決定に対する取消訴訟です。

 被災者は、訪問介護事業及び家政婦紹介あっせん事業等を営む本件会社に家政婦兼訪問介護ヘルパーとして登録し、平成27年5月20日から同月27日朝までの間、要介護者であるA宅に住み込み、訪問介護ヘルパーとして本件介護業務に従事したほか、家政婦として本件家事業務に従事し、深夜帯も含む1日15時間の労働に従事しました。

 被災者は、勤務終了後ほどなく急性心筋梗塞または心停止を発症し、同月28日未明に死亡しました。

 被災者の夫である原告は、渋谷労基署長に対して労災申請しましたが、被災者が労基法116条2項の「家事使用人」に該当するため労災保険法は適用されないとして不支給決定となりました。

(労基法116条)

② この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。② この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

(判決の要旨)

一審判決・東京地判令4.9.29労判1385.59

 一審判決は、被災者は本件介護業務については本件会社と雇用契約を締結した労働者であるものの、本件家事業務についてはAの息子と雇用契約を締結した家事使用人に当たるとして、原告の請求を棄却しました。

控訴審判決

 控訴審判決は、本件介護業務及び本件家事業務はA宅という同一の場所で従事するものであるうえ、労働時間と賃金が明確に区分されておらず、業務ごとに異なる雇用主による別個の雇用契約が締結されているとは解し難いことや、本件会社が本件家事業務についても業務指示を行っていたこと等からすれば、本件会社と被災者は、本件介護業務及び本件家事業務の双方を業務内容とし、午前5時から翌日午前0時までを労働時間とし、賃金を日給1万6000円とする雇用契約を締結していたものと認められるとしました。

 そして、本件家事業務についても本件会社の業務として行われている以上、家庭内の私的領域に国家的規制や監督を行うことが不適切であるという労基法116条2項の趣旨は妥当しないとして、被災者は本件家事業務についても家事使用人には当たらないとしました。

 また、被災者は行政通達(令和5年10月18日付基発1018第1号)所定の「短期間の過重業務」に従事したとして業務起因性を認め、労災不支給決定を取り消しました。

※確定

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