Case95 代償措置等のない70歳から67歳への定年引下げが不合理な就業規則の不利益変更であるとされた事案・大阪経済法律学園事件・大阪地判平25.2.15労判1072.38
(事案の概要)
原告労働者らは、被告法人が運営する大学の教授として勤務していました。
被告法人では、昭和55年に教授ら専任教員の定年を満70歳とする教員定年規程が制定されていました。
被告法人は、平成21年、原告労働者らが加入する労働組合との団体交渉において、組合に対して「専任教員の定年を満67歳とする。」などの定年引下げを提案しました。一方で、被告法人は、被告法人の審議・選考により再雇用された定年退職者については、定年前とほぼ同様の処遇で満70歳まで雇用されるという再雇用制度を設けました。
組合は、在職中の労働者については定年引下げを適用しないよう求めましたが、被告法人は何ら代償措置を提案することなく、教員定年規程を改正し、定年引下げを行い、原告らを定年による退職扱いとしました。
本件は、原告らが、本件定年引下げが合理性を欠き無効であると主張し、定年退職日を満70歳とする雇用契約上の地位の確認や賃金の支払等を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、本件定年引下げは、既得権を消滅、変更するものではないが、在職継続による賃金支払への事実上の期待への違背、退職金の計算基礎の変更を伴うものであり、実質的な不利益は、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するものであるから、就業規則の不利益変更として高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることが必要であるとしました。
そして、本件定年引下げには、一定の必要性、内容の相当性があるものの、使用者側の必要性と比較して、労働者側の被る不利益が大きく、これに対する代償措置等が十分に尽くされているとは認められず、就業規則の不利益変更として合理性を有しているとはいえないとして、本件定年引下げを無効とし、定年退職日を満70歳とする雇用契約上の地位の確認や賃金の支払等を認めました。
※控訴