Case122 給与等級の降格及び減給を伴う、営業職から事務職への配転命令全体を無効とした事案・日本ガイダント仙台営業所事件・仙台地決平14.11.14労判842.56
(事案の概要)
本件労働者は、営業係長(給与等級PⅢ・賃金月額約61万円)の地位にありましたが、売上実績がPⅢ職員15名中最下位だったこと等から、会社から執拗な退職勧奨を受けました。
会社は、労働者が退職に応じないため、労働者を営業職から事務職とする本件配転命令をしました。これに伴い、労働者は給与等級PⅠに降格し、賃金月額は約31万円とされました。配転後の労働者の仕事は、出勤時の宅急便荷物の受渡し、1日1回あるかないかの電話対応とゴミ捨てのみでした。
本件は、労働者が、営業職としての地位を仮に定めることや、差額賃金の仮払いを求めた仮処分です。
(決定の要旨)
決定は、賃金の大幅な切り下げを伴う配転命令の効力を判断するに当たっては、賃金が労働条件中最も重要な要素であり、賃金減少が労働者の経済生活に直接かつ重大な影響を与えることから、配転の側面における使用者の人事権の裁量を重視することはできず、労働者の適性、能力、実績等の労働者の帰責性の有無およびその程度、降格の動機及び目的、使用者の業務上の必要性の有無およびその程度、降格の運用状況等を総合考慮し、従前の賃金からの減少を相当とする客観的合理性がない限り、当該降格は無効と解すべきであるとしました。
また、降格が無効となった場合には、配転命令全体を無効と解すべきであるとしました。
そして、会社による労働者に対する執拗な退職勧奨からすれば、会社は労働者が退職に応じないために本件配転命令を行った経緯が明らかである等として、本件配転命令全体を無効とし、差額賃金の仮払いを認めました。営業職としての地位を仮に定める申立は却下されました。