Case15 退職金制度廃止に対する自由な意思に基づく同意を否定し不利益変更を無効とした事案・東神金商事件・大阪地判令2.10.29労判1245.41

(事案の概要)

 本件は、退職金規程の不利益変更を行った会社に対して、労働者らが旧退職金規程に基づく退職金の支払を求めた事案です。

 原告の一人は、会社から退職金制度廃止の説明を受け、特に意義を述べず、退職金の支払のために会社が加入していた企業年金保険の解約返戻金を受領していましたが、退職金制度廃止に同意する旨の書面は取り交わしていませんでした(もう一人の原告は、この後、退職金規程の不利益変更前に入社。)。

 また、退職金制度廃止は、会社が自社ビルを約3億円で購入し、その借金が嵩んだことを主たる要因とするものでした。

(判決の要旨)

 判決は、山梨県民信用組合事件・最判平28.2.19労判1136.6の「自由な意思」論に基づき、労働者が退職金制度廃止に特に異議を述べず、企業年金保険の解約返戻金を受領していたからといって、退職金制度廃止に同意していたとは言えないし、自社ビル購入による借金を理由として退職金制度を廃止することに労働者が同意するとは考え難いとして、このような行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえず、原告(の一人)の同意があったものとすることはできないとしました。

 また、退職金規程の不利益変更について、合理的なものとは認められず、原告らと会社との間の労働契約の内容とはならないとし、旧退職金規程に基づく退職金の支払を認めました。

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