Case103 役員の専属運転手につき出庫・帰庫にかかる時間及び待機時間の労働時間該当性が認められた事案・ラッキーほか事件・東京地判令2.11.6労判1259.73

(事案の概要)

 始業・終業の時刻や待機時間の労働時間該当性が争いになった残業代請求事件です。

 原告労働者は、被告会社会長の専属運転手として、会長専用車両(本件車両)の運転業務に従事していました。

 原告は、朝自宅近くの駐車場(本件駐車場)に向かい本件車両の運転を開始し、会長の指定する時刻・場所に会長を迎えに行き、その後は会長の指示に従い運転をし、運転をしていない時間は会長の指示があればすぐに迎えに行けるように路上で待機したりしていましたが、本件車両を本件駐車場に停めて自宅で待機することもありました。

 会長が一日の用事を終え、会長を自宅に送り届けた後は、原告は本件車両の給油をしたうえで本件車両を本件駐車場に停めて帰宅していました。

 原告は、本件車両の運行状況(運転開始時刻や運転終了時刻)をノートに記載していました。

(判決の要旨)

1 始業・終業時刻

 被告会社は、会長の指定する迎えの時間が始業時刻であると主張しましたが、判決は、本件車両を運行するため、本件車両を本件駐車場等に取りに行き、同所で本件車両に乗車して会長宅等へ向けて運転を行うことは、会長の専属運転手として会長の送迎を行うという原告の業務の遂行のために必要不可欠な行為であり被告会社の指揮命令下にあったとして、原告が本件車両を運転して本件駐車場を出た時刻(ノートに「出庫」などと書かれた時刻)を始業時刻としました。

 また、運行した本件車両を本件駐車場等に戻す行為や給油をする行為も業務のために必要不可欠な行為であり被告会社の指揮命令下にあったとして、原告が本件駐車場に本件車両を駐車させた時刻(ノートに「帰庫」などと書かれた時刻)を終業時刻としました。

2 待機時間

 判決は、原告が本件車両内で待機している時間は、待機時間の自由な利用が保障されていたとはいい難く、全て労働時間に当たるとしました。

 一方で、車両外で待機していた時間の一部は待機時間の自由な利用が保障されていたとして、1日1時間は労働時間に当たらない時間があったとしました。

3 その他

 被告会社は、営業手当が残業代に当たると主張しましたが、否定されました。

 原告は、被告会社社長や会長に対して損害賠償も求めていましたが否定されました。

※確定

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