Case142 賃金減額について単に労働者が明確に拒否しなかったからといって、黙示の承諾があったとはいえないとした裁判例・東京アメリカンクラブ事件・東京地判平11.11.26労判778.40
(事案の概要)
原告労働者は、被告法人で電話交換手として勤務していましたが、電話交換業務が廃止されたため洗い場勤務に職種変更されました。法人は、基本給は職種ごとの等級号俸制により決定されており原告も異議を述べておらず黙示の同意があったとして、本件職種変更に伴い原告の賃金及び賞与を減額しました。
本件は、原告が賃金減額の無効を主張し差額賃金の支払いを求めた事案です。
原告は職種限定契約も主張しましたが否定されています。
(判決の要旨)
判決は、基本給の減額のように労働条件の極めて重要な部分については、単に当該労働者が明確に拒否しなかったからといって、それをもって黙示の承諾があったとみなすことはできないとし、賃金減額についての原告の同意を否定しました。
また、法人の等級号俸制では厳密には全職名と等級号俸とが関連付けられていないこと、運用上も職務の変更に伴い当然に変更された等級号俸を適用しているとはいえないことなどから、基本給の変更は職種の変更とは別に個別に従業員との間で合意され、決定してきたものであるとし、職種変更に伴い当然に基本給が変更になるとは言えないとし、差額賃金の請求を認めました。
※地位確認は却下
※控訴