Case152 会社の誤った説明により雇用契約書に押印したことをもって基本給の一部を固定残業代とする不利益変更に対する自由な意思に基づく同意があったとはいえないとした事案・ビーダッシュ事件・東京地判平30.5.30労経速2360.21

(事案の概要)

 原告労働者の基本給は月50万円で、基本給に残業代を含むとの合意はされていませんでした。もっとも、被告会社は、原告の基本給に残業代が含まれるという扱いをし、原告に対して残業代の支給をしていませんでした。

 会社は、就業規則を作成して原告の基本給のうち約13万円を固定残業代とする固定残業制度を導入しました。就業規則の作成にあたり、会社は原告に対して固定残業制度の導入により給与が減少することはないと誤った説明をし、原告は固定残業制度が記載された雇用契約書に押印しました。

 本件は、原告が会社に対して、固定残業代の無効を主張して残業代等を請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、賃金に関する労働条件の不利益変更にかかる労働者の同意の有無については,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるのが相当であるとしました。

 そのうえで、会社の原告に対する説明内容は不正確かつ不十分であったことから、原告が雇用契約書に押印したとしても、これが原告の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したとはいえず,原告による有効な同意があったとは認められないとし、固定残業代を無効としました。

Follow me!