Case184 実質的な権限や勤務実態から専門学校の部長職及び課長職の管理監督者性を否定した事案・神代学園ミューズ音楽院事件・東京高判平17.3.30労判905.72【百選10版42】
(事案の概要)
本件は、原告労働者ら8名が被告2名に対して残業代請求した事案ですが、そのうち管理監督者性に当たるかが争点となった原告3名(原告ら)について取り上げます。
被告Aが運営する本件学校において、原告Aは事業部長の職に、原告Bは教務部長の職に、原告Cは課長の職にありました。
部長職である原告A及び原告Bは、従業員の採用に関与したり、経理支出にも関与していましたが、被告Aの指示・承諾を得ることなく業務を行う権限はありませんでした。
元々、原告らの労働時間はタイムカードで管理され、時間に応じた残業代が支払われていました。被告Aは、賃金体系を変更し、原告らが>管理監督者に当たるとして残業代を支払わなくなりました。
原告らが被告Aに対して、原告らが管理監督者に当たらないとして未払残業代を請求したのに対して、被告Aは原告らに対して、既払いの残業代が不当利得に当たるとして返還を請求しました。
(判決の要旨)
判決は、管理監督者が時間外手当支給の対象外とされるのは、その者が、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、そのゆえに賃金等の待遇およびその勤務形態において、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられている限り、厳格な労働時間等の規制をしなくてもその保護に欠けるところがないという趣旨に出たものと解されるとしました。
そのうえで、原告らが管理監督者に該当するといえるためには、その役職の名称だけでなく、原告らが実質的に以上のような法の趣旨が充足されるような立場にあると認められる必要があるとしました。
そして、原告らは、いずれもタイムカードにより出退勤が管理され、従前は割増賃金が支払われていたこと、上記のような重要な職務上の権限を実質的に付与されていたとは認められないことなどから、管理監督者に該当しないとしました。
※確定