Case214 約1年半の間に100回にわたり旅費を不正請求したことを理由とする懲戒解雇が、同等の行為をした従業員が停職処分であったことなどから無効とされた事案・ 日本郵便(北海道支社・本訴)事件・札幌高判令3.11.17労判1267.74
(事案の概要)
被告会社で広域インストラクターとして勤務していた原告労働者は、約1年半の間に、100回にわたり①社用車で出張先に赴きながら公共交通機関を利用したものと虚偽の旅費請求書等を提出して約195万円(うち不正受給が約52万円)を受給した、②私的に利用するためのクオカード分が上乗せされた宿泊費を請求して実費を上回る宿泊費の精算を受けたクオカード代約2万円を不正に受給した、③駐車場料金が宿泊費に上乗せされた宿泊プランを利用して宿泊したが駐車場料金を含めて宿泊費と表示された領収書の発行を受けてこれを添付して旅費を請求したこと(本件非違行為)を理由に懲戒解雇されました。
原告の他に、2名の広域インストラクターが旅費の不正請求および受給を理由に懲戒解雇され、同様の不正請求等を行った一般の営業インストラクター1名が停職3か月、9名が減給処分とされました。このうち、停職3か月となった従業員は、約3年半の間に247回の不正請求をしていました。
本件は、原告が本件懲戒解雇の無効を主張し、雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。
一審判決は、本件懲戒解雇を有効としました。
(判決の要旨)
判決は、本件非違行為が懲戒事由に該当し、非違の程度が軽くないとしながらも、本件非違行為の態様等は、停職3か月の懲戒処分を受けた従業員と概ね同程度のものであるとし、会社の旅費支給事務に杜撰ともいえる面がみられたこと、原告に懲戒歴がなく営業成績は優秀で会社に貢献してきたこと、反省して始末書を提出し利得額を全額返還していることなどから、懲戒解雇を選択することは不合理かつ相当でないとし、本件懲戒解雇を無効としました。
※上告棄却・不受理で確定