Case245 「強」に近い長時間労働と被災者の起こした事故を合わせて心理的負荷の強度を「強」として業務起因性を認めた事案・国・名古屋北労基署長(ヤマト運輸)事件・名古屋地判令2.12.16労判1273.71

(事案の概要)

 本件は、本件会社でセンター長として勤務していた被災者が自殺したことについて、妻である原告が過労死として労災申請をしたところ業務起因性がないとして不支給決定となったため、その取消を求めた事案です。

 被災者の発病直前の時間外労働時間数は、発病前1か月目が70時間、2か月目が約57時間、3か月目が約79時間、4か月目が約134時間、5か月目が約33時間、6か月目が約59時間でした。

 また、発病直前、被災者の部下であるセンター員の交通事故が2件あり、自身も交通事故を起こしていました。

(判決の要旨)

 判決は、被災者はセンター員による2件の事故についても責任および心理的負荷を感じ、センター員に対する事故防止のための指導を強めていたところであって、被災者の事故はその矢先に生じたものであるから、被災者が、実際の損害や自身の過失割合以上の責任を感じるとともに、センター長としての面目を失い、センター員に何もいえなくなってしまったと感じ、今後の本件会社における勤務についても不安を覚えたことは、客観的にみても無理からぬことであったとして、被災者の事故による心理的負荷を「中」としました。

 そして、長時間労働という「強」にごく近接した「中」の強度の心理的負荷に加え、被災者の事故という「中」の強度の心理的負荷を受けたことから、合わせて心理的負荷の強度は「強」であるとし業務起因性を認め、不支給決定を取り消しました。

※確定

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