Case253 産休中の労働者に対して退職扱いにすると告げ退職通知を送付したことが育児介護休業法等に違反する不法行為に当たるとされた事案・出水商事事件・東京地判平27.3.13労判1128.84

(事案の概要)

 原告女性労働者は、妊娠して産前産後休業及び育児休業を取得していましたが、出産翌日に会社から退職扱いにすると告げられ、退職金として現金3万2500円が同封された退職通知を送りつけられました。原告が抗議したところ、退職扱いは撤回されました。

 その後原告が会社に対して就労証明書の発行を求めたところ、会社は「雇えない。」などとしてこれを拒否しました。

 原告は、会社から復職拒否または解雇をされると感じ、復職予定日以降も就労できませんでした。

 原告が会社に対して労働審判を申し立てたところ、会社は原告に対して出社を命じました。

 本件は、原告が会社に対して、復職予定日以降就労できなかった期間の賃金や慰謝料等の支払いを求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、会社の対応は、会社が原告の復職を拒否し、または原告を解雇しようとしているとの認識を原告に抱かせてもやむを得ないものであり、会社が出社を命じるまでの原告の不就労は会社に帰責性があるとして、不就労期間の賃金の支払いを認めました。

 また、産休中の原告に対して退職扱いにする旨の連絡をし、原告から取消しを求められても直ちにこれを取り消さず、むしろ退職通知を原告に送付するという会社の一連の行為は労働基準法19条1項及び育児・介護休業法10条に反する不法行為に当たるとして、慰謝料15万円の支払いを認めました。

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

労働基準法19条1項

事業主は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出をいう。以下同じ。)をし、若しくは育児休業をしたこと又は第九条の五第二項の規定による申出若しくは同条第四項の同意をしなかったことその他の同条第二項から第五項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

育児介護休業法10条

※控訴

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