Case291 警備員が週に1度支社に赴き勤務実績報告書の提出等を行っていた時間及び現場から支社への移動時間が労働時間と認められた事案・テイケイ事件・東京高判令4.12.8

(事案の概要)

 被告会社と雇用契約を締結し取引先の現場で警備員として勤務していた原告労働者は、毎週水曜日に会社の支社に赴き、勤務実績報告書の提出、制服の点検、シフト希望表の作成・提出、賃金支払票の受領等をしていました(本件業務報告等)。

 本件は、原告が会社に対して、本件業務報告等の時間(10分程度)及び、本件業務報告等のための現場から支社への移動時間(1時間程度)が労働時間に当たるとして残業代請求した事案です。

 会社は、本件業務報告等の時間が労働時間ではないとしつつも、途中から本件業務報告等に対して実績支援手当なるものを支給するようになりました。会社は、これが残業代に当たると主張しました。

(判決の要旨)

一審判決・東京地判令4.6.1労経速2502.28

1 労働時間

 判決は、本件業務報告等が原告の業務に関連する行為であることは明らかであり、本件業務報告等は会社の明示又は黙示の指示により行った業務であるとして、これに要する時間は労働時間に該当するとしました。

 また、原告は現場で午後5時まで業務をした後、その日のうちに本件業務報告等をするために支社に移動しており、その移動については方法、時間等がおのずから制約され、会社の指揮命令の下にあったとして、移動時間も労働時間に該当するとし、原告の残業代請求を認めました。

2 固定残業代

 会社が、実績支援手当を支払うにあたり、業務実績報告等の時間が労働時間ではないという立場を維持していたことから、実績支援手当は労働に対する対価とはいえず、残業代に当たらないとしました。

控訴審判決

 控訴審も、一審判決を維持しました。

※上告棄却により確定

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