Case327 労働者が中退共から受け取る退職金のうち社内規程に基づく退職金額を超える差額を会社に返還する旨の労働協約及び合意の効力が民法90条により無効とされた事案・タイムス物流事件・大阪地判令4.12.22
(事案の概要)
原告会社が被告労働者を訴えた事件です。
会社には、会社が中退共に退職金を積み立てるかわりに、従業員が中退共から受け取る退職金のうち、社内規程に基づく退職金の額を超える差額は従業員が会社に返還する旨の労働協約があり、実際に複数の退職者が退職金差額を会社に返還していました。
しかし、被告労働者は退職金差額を会社に返還しませんでした。
会社は、被告労働者が会社に対して退職金差額を返還する旨の個別合意が口頭で成立していたとして、被告労働者に対して退職金差額の返還を求めました。
(判決の要旨)
判決は、会社と被告労働者の個別合意の存在を否定しました。
また、仮に退職金差額返還合意や労働協約があったとしても、それは中小企業退職金救済法の趣旨、目的に著しく反するものであって、民法90条により無効であるとし、会社の請求を棄却しました。