Case389 機密情報が入った私物ハードディスクを持ち帰っただけでは「機密を外に漏らした」という懲戒解雇事由や普通解雇事由に該当しないとした事案・乙山商会事件・大阪地判平25.6.21労判1081.19

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社で使っていた私物の外付けハードディスクを、会社の取引情報が入った状態で持ち帰りましたが、情報を外部に流出させた事実はありませんでした。

 会社は、原告がデータを持ち帰ったことが就業規則の「会社の業務上の機密及び会社の不利益となる事項を外に漏らさないこと」に違反するとして原告を懲戒解雇しました。

 本件は、原告が懲戒解雇の無効を主張して、雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。

 会社は、訴訟において懲戒解雇の通知には予備的に普通解雇の意思表示も含まれていたと主張しました。また、訴訟中に改めて普通解雇の意思表示をしました(第2次解雇)。

(判決の要旨)

1 懲戒解雇及び第2次解雇の有効性

 判決は、懲戒解雇は、懲戒処分の中でも従業員の身分を奪う最も重い処分であるから、懲戒解雇事由の解釈については厳格な運用がなされるべきであり、拡大解釈や類推解釈は許されず、情報が外部に流出する危険性を生じさせただけで、情報を「外に漏らさない」という服務規律に違反したということはできないとして、原告の行為は懲戒解雇事由に該当しないとしました。

 また、普通解雇事由にも該当しないとして第2次解雇も無効とし、地位確認を認めました。

2 懲戒解雇通知に普通解雇の意思表示が含まれるか

 判決は、懲戒解雇は、企業秩序違反に対する制裁罰として普通解雇とは制度上区別されたものであり、実際上も普通解雇に比し特別の不利益を労働者に与えるものであるから、懲戒解雇の意思表示はあくまで懲戒解雇として独自にその有効性を検討すべきであり、懲戒解雇の意思表示を事後的に普通解雇の意思表示に転換することは許されないとしました。

 そのうえで、本件での懲戒解雇の通知に予備的な普通解雇の意思表示が含まれていたと評価することはできないとしました。

※控訴

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