Case421 チームリーダーだった女性に対して産休育休復帰後は部下を付けずに専ら電話営業等をさせた措置等が均等法等が禁止する不利益取扱いに当たるとされた事案・アメックス(降格等)事件・東京高判令5.4.27労判1292.40

(事案の概要)

 原告労働者(女性)は、被告会社で37名の部下を持つ個人営業部のチームリーダーとして勤務していましたが、産前産後休業および育児休業を取得している間に組織変更があり原告のチームは消滅しました。

 原告は、育休から復帰する際、新設のアカウントセールス部門のマネージャーに配置され、部下は0名となりました(本件措置①)。その理由として、上司から「今の状況を考慮したときに、要は自分である程度……ハンドルできる状況の方がいいだろう」と説明されました。当該配置に伴う降格等はありませんでしたが、役職の変更によって業績連動給は減少しました。

 その約3か月後、会社は更に組織変更を行い、新設した部署のチームリーダーとして原告以外の労働者を配置しました(本件措置②)。原告は、自身がチームリーダーにならないことに不満を述べましたが、上司は「妊娠後復職するまで1年半以上休んでいてブランクが長く、復職してからも休暇が多いから、チームリーダーとして適切ではない」と説明しました。

 その後、原告は、人事評価において、リーダーシップに関する項目で最低評価を受けました(本件措置③)。

 原告は、復帰後、新規販路の開拓に関する業務に従事させられ、その後まもなく専ら電話営業に従事させられていました。

 本件は、原告が会社に対して、本件各措置等が均等法9条3項や育介法10条に違反すると主張して損害賠償請求などをした事案です。

 一審は原告の請求をいずれも棄却していました。

(判決の要旨)

1 判断基準

 判決は、経済的な不利益を伴わない配置の変更であっても、業務の内容面において質が著しく低下し、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものについては、労働者に不利益な影響をもたらす処遇に当たるというべきところ、女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業等を理由として、労働者につき、育児休業申出、育児休業等を理由として、上記のような不利益な配置の変更を行う事業主の措置は、原則として均等法9条2項および育介法10条の禁止する不利益取扱いに当たるとしました。

 例外的に、①当該労働者が当該措置により受ける有利な影響および不利な影響の内容や程度、当該措置にかかる事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて当該措置を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、または②事業主において当該労働者につき当該措置を執ることなく産前産後の休業から復帰させることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容の程度および上記の有利または不利な影響の内容や程度に照らして、当該措置につき均等法等の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、均等法等の禁止する不利益取扱いに当たらないとしました。

2 本件措置①

 原告が復帰後に就いた役職は、妊娠前のものと比較すると、その業務の内容面において質が著しく低下し、給与面でも業績連動給が大きく減少するなどの不利益があったほか、何よりも妊娠前まで実績を積み重ねてきた原告のキャリア形成に配慮せず、それを損なうものであったといわざるを得ないものであり、この措置について、原告が自由な意思に基づいて当該措置を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとか、均等法等の趣旨および目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとは言えないとし、本件措置①は均等法等が禁止する不利益取扱いに当たるとしました。

3 本件措置②

 組織変更において原告をチームリーダーとしていないこと自体は会社の人事権の範囲内であるものの、引き続き原告に部下をつけることなく電話営業等を行わせた限度において、均等法等が禁止する不利益取扱いに当たるとしました。

4 本件措置③

 原告のリーダーシップの項目が最低評価とされたのは、復帰後一人の部下もつけずに新規販路の開拓に関する業務に従事させられ、その後まもなく専ら電話営業に従事させられた結果であり、これらの点が均等法等が禁止する不利益取扱いに当たる以上、原告を最低評価とした措置も不利益取扱いに当たるとしました。

5 結論

 以上より、会社に対して慰謝料200万円の支払いを命じました。

※確定

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