Case471 弁護士法人が業務停止処分を受けたことによる所属弁護士の自宅待機期間について民法536条2項により賃金全額の支払が認められた事案・弁護士法人アディーレ法律事務所事件・東京地判令3.9.16労判1299.57
(事案の概要)
弁護士である原告労働者は、弁護士法人である被告と雇用契約を締結していました。
平成28年2月16日、消費者庁は、法人の広告が景表法4条1項2号の有利誤認表示に該当するとして、法人に対して、改善を求める措置命令を発しました。
平成29年10月11日、東京弁護士会は、上記広告について、法人に対して業務停止2月の懲戒処分をしました。法人は日弁連に対して審査請求しましたが、平成30年3月13日に棄却されました。また、法人は日弁連の裁決に対する取消訴訟を東京高裁に提起しましたが、令和元年7月24日に棄却され、令和2年1月23日に最高裁の上告不受理により確定しました。
法人は、業務停止処分を受けたことにより、平成29年10月11日から同年12月10日までの間、業務を停止しました。
法人は、業務停止により原告に行わせる業務がなくなったとして、平成29年10月28日から同年12月10日までの間、原告に対して自宅待機を命じ、その間労基法26条所定の休業手当のみを支払いました。
本件は、原告が法人に対して、労務不能は法人の責めに帰すべき事由によるものであるとして、民法536条2項に基づき休業期間中の賃金全額(休業手当との差額)の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」とは、債権者の故意・過失及びこれと信義則上同視すべき事由をいうとしました。
そして、法人は、本件各広告表示の掲示が景表法ひいては業務広告に関する日弁連規程に違反することを容易に認識し得たものであり、これにより本件業務停止処分を受け、本件履行不能を招来することを十分予見し得たにもかかわらず、本件各広告表示の掲載に及んだのであるから、少なくとも本件履行不能について過失があるといえ、民法536条2項の「被告の責めに帰すべき事由」によるものと認められるとし、原告の請求を認めました。
※確定