【残業代】Case589 テレビ番組制作業務における事業場外みなし制度の適用が無効とされるなどした事案・テレビ東京制作事件・東京地判令5.6.29労判1324.61
事案の概要
原告労働者は被告会社の従業員(副参事)としてテレビ番組制作業務に従事していました。原告は被告に対し、未払残業代及びそれに対する付加金、並びに48日間連続勤務や月100時間を超える時間外労働について安全配慮義務違反等に基づく損害賠償等を求めて提訴しました。
主に、制作業務における労働時間の算定方法、特に、その労働態様が事業場外労働みなし制の適用要件を満たすか否か等が争われました。
出勤停止の懲戒処分は有効とされました。
判決の要旨
1 事業場外みなし制
判決は、原告のテレビ番組制作業務について、その労働時間は労働基準法第38条の2第1項本文にいう「労働時間を算定し難いとき」には当たらないと判断しました。その理由として、原告の上司において、企画書などに基づき、原告から報告された日々の作業内容に基づいて進捗を確認し、指揮命令を行うことが可能であったといえること、また、勤怠システムにより始業・終業時刻を確認したり、入力状況を確認したりすることができたこと、編集作業内容・作業時間も確認できたこと等からすると、原告の労働時間を把握するため具体的な指揮監督を及ぼすことが可能なものであったことを挙げました。
そして、残業代及び付加金の支払いを被告に命じました。
2 安全配慮義務違反
原告の平成30年2月4日から同年3月23日までの48日間連続勤務や、同年2月および3月における100時間を超える法定時間外労働および法定休日労働を違法と判断し、これによる精神的苦痛に対する慰謝料として100万円の支払いを被告に命じました。
3 その他
管理者手当の固定残業代該当性が否定されました。
また、管理者手当のうち一定の金額を深夜勤務割増相当額として支払う旨の資格職位規程の変更について、原告の同意書が原告の自由な意思に基づいて作成されたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえないとして、当該変更に対する同意があったとはいえないとされました。
※確定