Case490 売上の10%の残業手当が時間外労働等の対価として支払われたものとは認められないとされた事案・久日本流通事件・札幌地判令5.3.31労判1302.5
(事案の概要)
長距離トラックドライバーである原告労働者が、被告会社に対して残業代請求した事案です。
会社の賃金規程では、残業手当は、基本給+諸手当に一定の乗率および労働時間を乗じたものとされていましたが、実際には売上の10%が残業手当として支払われていました。
2年間の請求期間のうち、後半の約1年分については運転日報が保存されていましたが、前半の約1年分については運転日報が保存されていませんでした。
(判決の要旨)
1 残業手当の残業代該当性
判決は、残業手当について、雇用契約書に時間外労働等の対価として支給する旨や算定方法についての記載がないこと、本件賃金規程に記載されている算出方法とまったく異なるものであること、採用面接やその後の賃金支給の際にも説明が認められないこと等から、本件残業手当を時間外労働等に対する対価として支払う旨の合意があったと直ちに推認することはできないとしました。
また、本件残業手当は、労働時間の長短にかかわらず一定額の支払いが行われるものであり、本件残業手当として支給される金額のなかには通常の労働時間によって得られる売上によって算定される部分も含まれることとなることから、当該部分と時間外労働等によって得られた売上に対応する部分との区別ができないものであること、他方で労働者の時間外労働時間の有無や程度を把握せずとも算定可能なものであり、労基法37条の趣旨に反するものであるといわざるをえないから、時間外労働等の対価として支払われるものとは認められないとしました。
2 実労働時間
運転日報のうち「点検」とされている時間について、運転手は修理が終わるまで修理工場内で待たなければならず、労働から離れる事を保障されている時間とはいえないとして、労働時間に当たるとしました。
「荷積み」「荷卸し」の前の「待機」時間について、運転手は呼び出しに応じて作業ができるよう準備した上で車内等で待機しなければならず、待機時間も含めて労働時間に当たるとしました。
また、運転日報がない期間の労働時間については、年によって原告の労働実態に大きな差はなかったとして、運転日報がある期間の労働時間と同程度の時間外労働をしたものと認定しました。
3 その他
定額支給されていた出張費、負担金について、基礎賃金に含まれるとしました。
※控訴