Case37 アルコール依存症等の既往歴がある労働者の自殺が労災と認められた事案・国・福岡中央労基署長(新日本グラウト工業)事件・福岡地判令3.3.12労判1243.27

(事案の概要)

 労災不支給決定に対する取消訴訟で、過労自殺の事案です。

 労働者は、会社に入社する約2か月前に不安障害と診断されていました。また入社の約1年後にアルコール依存症と診断されていました。

 労働者は、直近6か月間恒常的に長時間労働に従事し、直近2か月は月100時間前後の時間外労働をした後、入社の約2年後に自殺しました。

 本件では、うつ病エピソードの発症時期(労働者が長時間労働以前からうつ病エピソードを発症していたか)が争点となりました。

(判決の要旨)

 判決は、対象疾病を発病しているか否かは、本件の具体的事情に照らし「ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン」に示された各疾病の診断基準を満たすか否かによって判断すべきであるとしたうえ、労働者は自殺直前の時期までうつ病エピソードの診断基準を満たしておらず、自殺直前の時期にうつ病エピソードを発症したとしました。

 また、労働者の不安障害やアルコール依存症の程度は重くなく、平均的労働者の範囲内といえるから、労働者の個体側要因として評価すべきではないとして、うつ病エピソード発症の業務起因性を認めました。

※確定

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