Case80 会社による監視・孤立化政策が労働者の人格的利益を侵害し不法行為に当たるとした最高裁判例・関西電力事件・最判平7.9.5労判680.28【百選10版13】

(事案の概要)

 原告ら労働者は、いずれも労働組合の組合員で、共産党員ないしその同調者でした。被告会社は、「特殊対策」の名称のもと、原告ら左派グループを「不健全分子」として監視、退社後の尾行、警察署への情報提供の依頼、原告の一人のロッカーを無断で開けて手帳を写真撮影するなどし、原告らと接触、交際をしないよう他の従業員に働きかけるなどしました。

 原告らは、会社の行為が原告らの思想の自由や名誉に対する侵害行為であるなどとして、会社に対して不法行為に基づき損害賠償及び謝罪文の掲示等を求めました。

(判決の要旨)

一審判決

 一審は、会社の行為が原告らの思想、信条の自由を侵害し、職場における自由な人間関係の形成を阻害するとともに、原告らの名誉を毀損し、その人格的評価を低下させたものであるとして、慰謝料80万円などの支払を会社に命じました。

控訴審判決

 控訴審は、会社の行為は間接的に原告らに思想、信条の転向を強制するものであるから、原告らの思想、信条の自由を侵害する行為に当たるとしました。

 また、会社の行為は、使用者の従業員に対する監督権の行使として許される限界をこえ、原告らの人権、プライバシーを侵害するものがあったとし、一審判決を維持しました。

上告審判決

 最高裁は、会社の行為は、原告らの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また手帳の写真撮影はプライバシーを侵害するものであり、原告らの人格的利益を侵害するものであり、これら一連の行為が会社としての方針に基づいて行われたことから、それぞれ会社の原告らに対する不法行為を構成するとして、会社の上告を棄却しました。

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