Case120 非管理職間の降格は管理職の降格と比べて使用者の裁量が狭いとされ部長待遇から課長待遇への降格が無効とされた事案・近鉄百貨店事件・大阪地判平11.9.20労判778.73
(事案の概要)
被告会社では、原則として55歳以上の管理職は、待遇職(部長待遇・課長待遇等)に降格し役職級が4割カットされる待遇職制度を導入していました。
原告労働者は、55歳になり、部長から部長待遇職に降格になりました。その約2年後、原告は、勤務態度・勤務成績が悪いとして、部長待遇から課長待遇に降格になり、給与が月5万円減額となりました(本件降格)。
原告は、課長待遇への本件降格が不法行為ないし債務不履行に当たるとして、差額賃金や慰謝料等の損害賠償を請求しました。
なお、原告は、会社から不利益変更を伴う出向内示を受けた後に退職しており、出向内示等が退職強要に当たり不法行為を構成するとも主張しましたが、否定されています。
(判決の要旨)
判決は、給与減額という不利益性が存在するうえ、待遇職という非管理職間の本件降格に関する会社の裁量は、管理職についての昇進・降格の裁量よりは狭く解するべきであるとしました。
そして、原告の勤務状況には問題がないとはいえないが、一定の業績をあげており、会社の期待には過度な点があること、会社の原告に対する対応にも問題があること等の諸般の事情を考慮すれば、本件降格は、裁量の範囲を逸脱し、これを濫用した違法なものであり、不法行為に当たるとし、差額賃金や慰謝料30万円の支払いを認めました。
※確定