Case493 上司からの暴行やその後の管理部長の「ぶち殺そうか」との発言により妄想性障害にり患したと認められた事案・ファーストリテイリングほか(ユニクロ店舗)事件・名古屋高判平20.1.29労判967.62
(事案の概要)
被告会社の店舗で勤務していた原告労働者は、店舗運営日誌に、被告店長の仕事上の不備を指摘し「店長へ」「どういうことですか?反省してください」と記載しました。これを見た被告店長は、原告を休憩室へ呼び出し、原告の態度に激高して原告の胸倉を掴み、原告の背中を壁に3回ほど打ち付け、顔面に頭突きをしました(本件事件)。原告は救急車で搬送され、会社を休むようになり、後にPTSDや神経症と診断されました。
その後、原告の対応を担当していた管理部長は、原告が電話で本件事件の報告書の開示などを求めたことに対して「いいかげんにせいよ、お前。おー、何考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ、お前。」などと声を荒げました(本件発言)。
原告は労災認定を受け、療養補償給付や休業補償給付を受けました。
本件は、原告が本件事件及びその後の管理部長の言動などによりPTSDを発症したなどと主張し、会社や被告店長に対して損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
判決は、被告店長の暴行の違法性は明らかとしたほか、管理部長の本件発言についても、原告がPTSDないし神経症である旨の診断を受け、担当医から、会社の関係者との面談、仕事の話をすることを控える旨告知されていたことを認識していたことからすれば違法であり不法行為を構成するとしました。
判決は、PTSDとの因果関係は否定しましたが、本件事件及び本件発言によって原告が妄想性障害にり患したとして、損害合計約3000万円を認定したうえ、6割の素因減額や、労災給付の控除などをして被告らに対して約230万円の支払いを命じました。
※上告棄却により確定