Case12 シフト決定権限の濫用を認め平均賃金の支払を認めた事案・シルバーハート事件・東京地判令2.11.25労判1245.27
(事案の概要)
労働時間について雇用契約書に「8時間」「シフトによる」との記載しかない労働者が、会社によるシフトの削減が不当であるとして、削減された分の賃金の支払を求めた事案です。
労働者のシフトは、平成29年5月は13日(73.5時間)、6月は15日(73.5時間)、7月は15日(78時間)、8月は5日(40時間)、9月は1日(8時間)、10月は0日と大幅に削減されていました。
また、会社は労働者の賃金から振込手数料を控除して支払っており、控除の違法性も争点となりました。
会社が労働者に対して起こした債務不存在確認訴訟に対して、労働者が反訴しました。
(判決の要旨)
判決は「シフト制で勤務する労働者にとって、シフトの大幅な削減は収入の減少に直結するものであり、労働者の不利益が著しいことからすれば、合理的な理由なくシフトを大幅に削減した場合には、シフトの決定権限の濫用に当たり違法となり得ると解され、不合理に削減されたといえる勤務時間に対応する賃金について、民法536条2項に基づき、賃金を請求し得る」としました。
そして、シフトを1日とした9月及び一切のシフトを入れなかった10月についてはシフトの決定権限を濫用したものとして違法とし、会社に対して、シフトが削減され始めた8月の直近の3か月(5月~7月)の賃金の平均額の支払を命じました。
労働者は、主位的に労働時間について週3日、1日8時間の合意が成立していたとも主張していましたが、これは認められませんでした。
賃金から振込手数料を控除することは違法であるとし、振込手数料分の未払賃金の支払も命じました。
※控訴