Case220 歩合給および家族手当を廃止して割増賃金として支払う運行時間外手当を創設する給与規程の改定が不利益変更に当たり無効とされた事案・栗田運輸事件・東京高判令3.7.7労判1270.54
(事案の概要)
被告会社は、給与規程を改定し、歩合給および家族手当を廃止し、歩合給に代えて割増賃金として運行時間外手当を創設しました。
これにより、原告労働者ら3名の通常の労働時間の賃金は、約28.6%~32.5%減額されました。
本件は、原告らが、給与規程の改定が不利益変更に当たり無効であるとして、差額賃金の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、本件給与規程の改定が賃金の不利益変更に当たるとしました。
そして、本件変更による不利益の程度は著しいといわざるを得ないところ、本件変更の必要性が高かったとは認め難いことに加え、本件変更当時に特段の代償措置もなかったことからすれば、労働組合等との交渉での承諾や、新給与規程の内容が相当でないとはいえないことを踏まえても、本件変更が、このような不利益を法的に受忍させることもやむを得ない高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであると認めることはできないとして、本件給与規程の改定を無効とし差額賃金の支払いを認めました。
※上告