Case285 労働契約が解除され在留資格が取り消されるおそれがある中で行われた賃金減額への同意が自由な意思に基づかず無効であるとされた事案・カワサキテクノリサーチ事件・大阪地判令4.7.22
(事案の概要)
外国人である原告労働者は、勤務成績及び勤務態度に問題があるとして、被告会社より正社員からアルバイトへの変更を打診されました。原告は、在留資格の関係上アルバイトになることはできないとしてこれを断りました。
そうしたところ、会社は原告に対して月額賃金を27万円から22万円に減額することを打診し、最終的に原告はこれに同意しました。
本件は、原告が賃金減額への同意の無効を主張して、会社に対して差額賃金を請求した事案です。
なお、度重なる遅刻等を理由とする解雇の有効性も争われましたが、解雇は有効とされています。
(判決の要旨)
判決は、賃金の減額幅が約2割にも上ることから、本件賃金減額が原告に与える不利益は相当大きいものであったとしました。
また、同意に至る経緯において、原告は、本件賃金減額を拒否すれば本件労働契約の存続自体が危ぶまれ、ひいては日本の在留資格を取り消されるおそれがあるのではないかとの危惧を抱いたとしてもやむを得ないとしました。
そして、本件賃金減額により原告が被る不利益の内容及び程度並びに原告が本件賃金減額に同意するに至った経緯等に鑑みれば、原告の同意が原告の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとは言い難いから、本件賃金減額につき原告による有効な同意があったとはいえないとしました。